農業法人設立、就農・農業参入・6次産業化支援【田中やすあき行政書士事務所】

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農業が会社経営に適さない理由 その1

2020.05.12

 

先日、農業の法人化について、私なりの私見を書きました。

 3訂版 新規農業参入の手続きと農地所有適格法人の設立運営

 

私、書籍執筆や法人化の支援をさせて頂いておりながら、農業の法人化については、誰にでもはお勧めはしておりません。

むしろ、「やめた方がいいですよ」とお話をする事の方が多いかも知れません。

 

さて。

そもそも農業を法人化する目的は何でしょうか?

 

これを説明する為には、法人そのものの成り立ち、法人の仕組みや目的から説明しなければなりません。

 

法人にも、NPO法人、社団法人、宗教法人、株式会社、合同会社、農事組合法人など、様々な種類がありますが、ここで説明するのは、「株式会社」に絞らせて頂きます。

もちろん株式会社以外でも農業は出来ますが、多くの人にとっては、馴染まないと思われますので、ここでは割愛します。農事組合法人は、名称から馴染んでいるように見えますが、もっとも「経営」に適さない法人です。また機会があれば書きます。

 

さて。

株式会社の始まりは、1602年オランダで生まれた「東インド会社」とされています。

****以下、Wikipediaより抜粋**

16世紀から17世紀の大航海時代、ヨーロッパでは、共同資本により、貿易や植民地経営のための大規模な企業が設立されるようになった。イギリスのレバント会社やイギリス東インド会社(1600年設立)である。もっとも、初期の貿易会社は、航海の都度出資を募り、航海が終わる度に配当・清算を行い、終了する事業であった。1602年に設立されたオランダ東インド会社は、継続的な資本を持った最初の株式会社であるとされる。株式会社は小口の資本(資金)を社会全体から広汎に集めることが可能であると同時に、各種の保険や金融制度同様、当時にあってはリスク散の仕組みでもあった。

******************

 

航海には多額のお金と、大きなリスクが伴います。

その為に考え出された仕組みが「株式会社」

この根本の仕組みは、今も大きくは変わりません。

 

最もシンプルに言えば、株式会社の仕組みが作られたその目的は 「集金システムの構築」と「リスク分散」にあると言えます。

 

集金システムの仕組みとしては

「株式を発行(売る)する ⇒ お金を集める ⇒ 集めたお金で、航海を行う ⇒ 儲かる ⇒ 利益を株主に分配する

 

分かりやすく言うと

「今から航海に行って香辛料を沢山持って帰ります。めっちゃ儲かりますよ~」

「ついては、この券(株式)を買ってくれたら、券(株式)の数に応じて、利益を分けますよ~」

「だから、この(券)株式を買いませんか~。今だけですよ~。お得ですよ~」

という感じです。

 

リスク分散の方法は

「集めたお金を資本金とする ⇒ 一回の航海で失敗。2回目、3回目の航海で成功 ⇒ 1回目2回目3回目の合算で利益を株主に分配する

 

例えば、1回の航海で1億円かかるけど、2億円売上があるとします。

1回目失敗。経費1億、売上ゼロ。利益-1億円。

2回目成功。利益1億円。売上2億。利益+1億円。

3回目成功。利益1億円。売上2億。利益+1億円。

 

もし1回目の航海だけなら1億円マイナスになります。でも、3回の合計では経費3億円。売上4億円となり1億円の利益がでます。

このようにすることでリスク分散を行います。

 

 

さて。お気づきのように、どちらも最後は「利益を株主に分配する」になります。

 

そうです。結局のところ、株式会社の最終的な目的は「利益を株主に分配する」という事に尽きるのです。

 

 

では、もう一つ、「株式会社は誰のもの」だと思いますか?

 

「従業員?社長?会長?」どれも半分正解で半分不正解。

正解は、株式会社は株主のものです。

 *正確には、株式には大きく「利益配当を受ける権利」と「議決権」とがあり、「議決権」=「株式単位で区分された所有権」になります。議決権が無い株式もあり、この場合は、厳密には、会社は株主のものではなくなりますが、割愛します。

 

株式会社では、最も多くの株式を持つものが最も大きな決定権を持ちます。社長でも従業員でもありません。力は株式の数で決まります。

*厳密には議決権の数

 

 では、究極の質問です。

「株式会社が最も大切にしなければならない人は、誰でしょうか?」

「社員?社長?会長?顧客?株主?」

 

正解は、「株主です。」

 

「えっ?」と思われる方も多いと思います。

 

株主を大切にする為に ⇒ 利益が必用 ⇒ 利益を生む為に社員、社長、商品がある ⇒ 利益を生む為に顧客に商品(サービス)を提供する

という順になります。

 

最初、これを知った時(気がついた時)、私も愕然として、残念な気持ちになりました。

「逆じゃないか!」

*顧客を大事にしないと結局、利益も生まれないので、逆とも言えるかも知れませんが・・・

 

でも、株式会社の原理原則を突き詰めると、こうならざるを得ません。

 

そうは言え、少し前の日本では、「従業員を大切にする!終身雇用!」という事で、少し様子は異なっていたかも知れません。

でも、これも最終的に利益を生む為のものです。

本来の株式会社の目的からすると、従業員を大切にするとか終身雇用というのは、利益を生む為の一つの手段にすぎません。

 

そもそも、本来、株式会社の成り立ち、その仕組み、目的から考えると、株式会社は株主の為に利益を追求する宿命にあるのです。

 

残念でもなんでも、これが、人類が考え出した株式会社というシステムになります。

まずは、これを十分に認識する事が大事です。

 

次に「それでは農業では・・」と考えていきます。

今回は、ここまでにしておきます。

 

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